債券が、もう一度「ブレーキ」として使える時代になってきた

債券が、もう一度「ブレーキ」として使える時代になってきた

少し前まで、日本の個人投資家に「債券を持ちましょう」と言っても、あまり魅力的には聞こえなかったと思います。

金利がほとんどなかったからです。

値上がり益を狙うなら株式。

安全に置いておくなら預金。

わざわざ債券を持つ意味が分かりにくい時代が長く続きました。

でも、日本にも金利が戻ってきました。

私は、これによって債券がもう一度、個人のポートフォリオで「仕事」をしやすくなってきたと考えています。

では、債券には何をしてもらうのでしょうか。

私は、株式をアクセル、債券をブレーキのように考えています。

債券は、株より儲けるために持つものではありません。

ポートフォリオ全体の揺れを小さくして、投資を続けやすくするために持つ。

それが、私が債券に期待している仕事です。

「取れるリスク」ではなく「取る必要のあるリスク」

たとえば50歳で、株式2000万円、現金500万円を持っている人がいるとします。

「債券も持った方がいいでしょうか」

と聞かれたら、私は年齢だけでは決めません。

まず聞きたいのは、

「その2000万円が1400万円になっても、大丈夫ですか?」

ということです。

600万円減っても普通に眠れる。

仕事にも集中できる。

家族にも当たらない。

そして何より、怖くなって売らない。

本当にそう思えるなら、株式中心でもいいでしょう。

まだ目標まで距離があり、リスクを取る必要がある人もいます。

でも、

「600万円減るのは、ちょっとつらいな」

と思うなら、ブレーキを付けてもいい。

大切なのは、

「50歳だから債券を持つ」

ことではありません。

自分が取れるリスクではなく、自分が取る必要のあるリスクを考えることです。

現在地がどこなのか。

目的地はどこなのか。

そこへ行くために、どれくらいのリターンが必要なのか。

そのために、どれくらいのリスクを取ればいいのか。

この順番で考える。

目的地まで歩いて行けるのに、わざわざ全速力で走る必要はありません。

急がず、ゆっくり。

そのための道具の一つが、債券です。

金利が戻ると、債券の景色も変わる

では、なぜ今、改めて債券なのでしょうか。

理由はシンプルです。

金利があるからです。

債券価格は金利が上がれば下がります。

これは、金利上昇局面で債券を持っていた人がこの数年経験してきたことです。

日本の金利正常化の過程でも、債券価格は下落しました。

ただ、金利が上がることは、債券投資家にとって悪いことだけではありません。

新しく買う債券から得られる利息は増えます。

債券ファンドなら、保有している債券が満期を迎えたり入れ替わったりするにつれて、より高い利回りの債券が組み入れられていきます。

つまり金利上昇は、

「今持っている債券の価格が下がる」

ことであると同時に、

「これから得られる収益力が改善する」

ことでもあります。

金利がほとんどなかった時代には、このクッションが非常に薄かった。

今は少し景色が違います。

だから私は、日本にもようやく「ブレーキを踏めるだけの金利」が戻ってきたと感じています。

どんなブレーキが欲しいですか?

では、どんな債券を持てばいいのでしょうか。

ここでも私は、

「一番儲かりそうな債券はどれか」

とは考えません。

「どんなブレーキが欲しいですか?」

と考えます。

株式の値動きを和らげる、できるだけシンプルなブレーキが欲しい。

そういう目的なら、私はまず日本国債を考えます。

外債には、日本国債より高い利回りが期待できるものがあります。

でも、為替ヘッジをしなければ為替変動の影響を受けます。

せっかく株式のブレーキを求めているのに、わざわざ為替という別のアクセルを付ける必要があるのか。

私はそう考えます。

為替ヘッジをすれば為替リスクは抑えられますが、今度はヘッジコストを考えなければなりません。

社債という選択肢もあります。

国債より高い利回りが期待できる一方、企業の信用リスクを取ります。

景気が悪化したときには、株式と一緒に値下がりすることもあります。

私は、

国債は比較的シンプルなブレーキ。

社債は、少しアクセルも付いたブレーキ。

そんなふうに考えています。

どちらが優れているという話ではありません。

何のために持つかです。

まず仕事を決める。その仕事に合う商品を選ぶ

個人向け国債を直接持つ方法もあれば、債券ファンドを使う方法もあります。

満期まで持つことを前提に、値動きをあまり気にせず利息を受け取りたいなら、個人向け国債は分かりやすい。

一方、債券市場全体へ分散して投資し、金利環境の変化に合わせて中身が少しずつ入れ替わっていく仕組みを使いたいなら、債券ファンドという選択肢もあります。

値動きをさらに抑えたいなら、残存期間の短い債券を中心としたファンドなどもあります。

ここでも、商品名から入る必要はありません。

まず仕事を決める。

その仕事に合う商品を選ぶ。

私はその順番が好きです。

債券も下がっている。それでもブレーキは壊れていない

そして、債券についてもう一つ誤解されやすいことがあります。

「株が下がったとき、債券は上がるんですよね?」

必ずしもそうではありません。

株式と債券が同時に下がることはあります。

インフレが強く、金利が急上昇する局面などでは、実際にそういうことが起きます。

だから、

「株と逆に動くから債券はブレーキになる」

と考えてしまうと、期待外れになることがあります。

私が考えるブレーキは、少し違います。

ブレーキとは、株が下がった日に必ず上がる資産ではありません。

ポートフォリオ全体の揺れを小さくし、投資を続けやすくする資産です。

たとえば株式が30%下がったとき、債券も5%下がったとします。

株式70%、債券30%のポートフォリオなら、全体の下落率は単純計算で約22.5%です。

債券も下がっています。

でも、株式100%のマイナス30%よりは小さい。

ブレーキは壊れていません。

逆に動くからブレーキなのではない。

全体の揺れを小さくするから、ブレーキなのです。

「債券は上がりますか?」ではなく

もちろん、私は「今こそ債券を買うべきだ」と言いたいわけではありません。

日本の金利がここからさらに上がる可能性もあります。

インフレが続くかもしれません。

財政への懸念が金利に影響することもあるでしょう。

未来の金利を正確に当てることはできません。

だからこそ私は、金利の天井を当ててから債券を買おうとは考えません。

株式には株式の仕事を。

債券には債券の仕事を。

現金には現金の仕事を。

それぞれに役割を与えて、あらかじめ決めた配分で持つ。

市場が動いたら、その配分へ戻す。

機関投資家の運用でも、毎回未来を当てて資産を全部入れ替えているわけではありません。

それぞれの資産に役割を持たせ、全体としてリスクを管理します。

個人の資産運用でも、基本は同じだと私は思っています。

ポートフォリオは、資産だけでなく、生活も安定させるためにある。

だから、債券を持つかどうかを考えるとき、

「これから債券は上がりますか?」

ではなく、

「私のポートフォリオに、ブレーキは必要ですか?」

と考えてみてください。

そして必要だと思ったら、どんなブレーキが自分には合うのかを考える。

急いで全部を変える必要はありません。

急がず、ゆっくり。

投資は長く続きます。

ブレーキがあるからこそ、安心してアクセルを踏めることもあるのです。

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