個別株で大きく儲かったという話を聞くことがあります。
半年で2倍になった。
数年で10倍になった。
AIや半導体など、値動きの大きな分野では、そんな銘柄が話題になることもあります。
それは素直に、よかったですね、と思います。
個別株のリスクを取って、その会社を選んだ。
そして実際に株価が上がった。
少なくとも、その賭けには勝ったということです。
ただ、一度うまくいったからといって、それがこれからも続くとは限りません。
そこは、少し分けて考えた方がいいと思っています。
一度当たったことと、当て続けられることは違う
個別株投資には、インデックス投資にはない面白さがあります。
会社を調べる。
決算を読む。
これから伸びそうな産業を考える。
自分なりの仮説を立てて投資する。
その予想が当たって、株価が大きく上がれば嬉しいでしょう。
少しギャンブル的な刺激もあります。
私はそれ自体が悪いとは思いません。
ただ、気をつけたいのは、
「一度当たった」
という経験が、
「自分には銘柄を見抜く能力がある」
に変わってしまうことです。
そして次は、もっと大きなお金を賭ける。
さらに当たれば、もっと賭ける。
短期間で大きく勝とうとすれば、どうしても一つの銘柄やセクターに集中することになります。
うまくいけば、大きく増える。
でも当然、逆もあります。
私は、そこまで急がなくてもいいと思っています。
大きく勝つのは、時間をかけて大きく勝てばいい。
その方が、私には合っています。
大きく勝つために、大きく賭けなくてもいい
株式市場の長い歴史を見ると、市場全体の大きなリターンを、ごく少数の銘柄が生み出してきたことが分かっています。
だからこそ、
「その少数の銘柄を見つければいい」
と考えたくなります。
もちろん、それができれば素晴らしい。
問題は、どの会社がその少数になるのかを、事前に知るのが難しいことです。
私は、未来の勝ち銘柄を探し続けるより、その勝ち銘柄も含まれている市場を広く持つ方を選びます。
大当たりする一社だけではなく、外れる会社もまとめて持つ。
その代わり、特定の一社に人生を左右されない。
少し地味です。
でも私は、投資ではそれくらいでいいと思っています。
短期間で資産を何倍にもする必要がなければ、時間を味方につければいいからです。
それでも個別株をやりたいなら
とはいえ、
「個別株を選ぶのが楽しいんです」
という人に、
「やめた方がいいですよ」
と言うつもりもありません。
私なら、資産形成の本体とは別にします。
企業でいえば、研究開発費のような位置づけです。
資産形成の中心は、自分で決めた配分とルールで運用する。
その外側に、
「ここは自由にやっていい」
という小さな枠を作る。
個別株でもいい。
テーマ型の投資でもいい。
自分で会社を調べて投資してみてもいい。
失敗すれば、それも勉強代です。
私なら金融資産の10%程度までを一つの目安に考えるかもしれませんが、もちろん10%という数字に正解があるわけではありません。
5%でもいいし、ゼロでもいい。
大切なのは、
それが資産形成の本体なのか、遊びのお金なのかを、自分の中で分けておくこと
だと思います。
お金の10%でも、頭の中の90%になっていないか
ただ、もう一つ考えたいことがあります。
100万円だけ個別株に投資したとします。
金融資産全体から見れば、大した割合ではない。
ゼロになっても、人生設計にはそれほど影響しない。
それなら問題ないように見えます。
でも、その100万円が気になって仕方がない。
朝起きたら株価を見る。
通勤中にニュースを見る。
昼休みに掲示板を見る。
帰宅したらYouTubeを見る。
寝る前には米国市場を見る。
翌日の値動きを考えながら眠る。
こうなると、少し話が変わってきます。
お金の10%しか投資していなくても、頭の中の90%を占領されているなら、それは本当に小さな投資でしょうか。
投資で使っているのは、お金だけではありません。
時間も使っています。
注意力も使っています。
ときには、気持ちの余裕まで使っています。
投資のコストというと、信託報酬や売買手数料を思い浮かべます。
でも私は、投資について考えている時間も、一つのコストだと思っています。
趣味なら、それでいい
もちろん、それが楽しいなら話は別です。
企業を調べるのが好き。
決算書を読むのが面白い。
自分なりに将来を予想して、当たったり外れたりするのが楽しい。
競馬や競輪とはまた違った、少し知的なギャンブルとして個別株を楽しんでいる。
それなら、その時間そのものが趣味です。
映画を観る時間に「タイパが悪い」と言っても仕方がないのと同じで、楽しんでいる時間まで効率で測る必要はありません。
でも、
「もっと儲けなければ」
「次の10倍株を見つけなければ」
「市場平均に負けたくない」
と思いながら、毎日何時間も使っているのなら、一度考えてみてもいいと思います。
その時間で、本当は何をしたかったのか。
私は、市場で圧勝したいとは思わない
これは、かなり個人的な好みです。
私は、投資のことを一日中考えていたいタイプではありません。
市場を支配したいとも思わないし、市場平均に圧勝したいとも、あまり思いません。
必要なリターンを取りながら、長く市場にいられれば、それでいい。
そのために資産を配分して、ルールを決めて、あとはなるべく余計なことをしない。
そこで浮いた時間を、投資以外のことに使いたいと思っています。
だから個別株投資を否定するつもりはありません。
やりたい人は、やればいい。
楽しいなら、それも投資との一つの付き合い方です。
ただ、ときどき確認してみてもいい。
その投資を持ったまま、普通に暮らせていますか。
資産形成の本体を壊していないか。
そして、その小さな投資に、自分の時間まで大きく賭けていないか。
遊びのお金があってもいい。
でも、遊びの投資に人生まで占領される必要はありません。
投資に使うお金には上限を決める人が多いのに、投資に使う時間には上限を決めない人もいます。
お金だけではなく、時間にも配分があっていい。
私はそう思っています。
このテーマを、もう少し考える
投資に使っているのは、お金だけではない
→「投資の勉強は、いつまで続ければいいんだろう」
小さな投資でも、頭の中を占領しているなら
→「証券口座を閉じたあとも、相場を見続けていませんか?」
自分で選んだリスクなのか、もう一度考えてみる
→「その投資、どうして始めたんですか?」
