その投資、どうして始めたんですか?

その投資、どうして始めたんですか?

もし、これまで投資にほとんど興味のなかった親が、65歳で退職した途端に、

「投資信託を買ったんだ」

と言い出したら。

私はたぶん、最初にこう聞くと思います。

「どうしたの、急に?」

もちろん、何を買ったのかも気になります。

いくら買ったのか。どんな商品なのか。手数料はいくらなのか。どれくらい値下がりする可能性があるのか。

でも、その前に知りたい。

どうして、今まで興味のなかった投資を急に始めようと思ったのか。

退職金が入ったから。

銀行で勧められたから。

預金のままではもったいないと言われたから。

物価が上がっているから。

周りも投資をしているから。

理由はいろいろあるでしょう。

もちろん、それらが悪いわけではありません。

ただ、これまで投資をしてこなかった人が、大きなお金を手にしたことをきっかけに初めて投資をするのなら、商品を選ぶ前に一度だけ考えてみてほしいことがあります。

その投資は、何のためにするのでしょう。

商品が悪くなくても、その投資が必要とは限らない

たとえば、2000万円の退職金を受け取った人が、そのうち500万円で投資信託を買ったとします。

商品を確認してみると、株式と債券に分散された、ごく普通のバランスファンドだった。

手数料もそれほど高くない。

特別におかしな商品でもない。

それなら問題ないようにも見えます。

でも私は、それでも聞くと思います。

「この500万円、何のために運用するの?」

老後の生活費を増やしたい。

子どもに残したい。

将来やりたいことがある。

あるいは単純に、投資をやってみたかった。

それなら、その目的に合った運用方法を考えればいい。

でも、

「特にないけど、預金のままではもったいないと言われたから」

だとしたら。

私は、

「それなら、何もしなくてもいいんじゃない?」

と言うかもしれません。

投資を始めること自体を、目的にする必要はないからです。

現金にも、仕事がある

投資をしていると、現金で持っているお金がもったいなく見えることがあります。

株式なら、長い時間をかけて成長が期待できる。

債券なら、利息を受け取れる。

それに比べて、現金はあまり増えません。

インフレが続けば、実質的な価値が目減りすることもあります。

それでも、現金には現金の仕事があります。

退職後なら、毎日の生活費になる。

突然まとまったお金が必要になったときに使える。

そして何より、

相場が大きく下がったときに、投資している資産を慌てて売らなくてもいい。

これも立派な仕事だと思います。

私は、退職後なら当面使うお金として、生活費の2年分程度を現金で持つことも一つの考え方だと思っています。

それ以外にも債券などを組み合わせて、資産全体の値動きを抑える方法があります。

もちろん、これがすべての人の正解ではありません。

十分な収入があって、株式が半分になっても気にならず、それでも資産を大きく増やしたい人なら、もっとリスクを取る選択もあるでしょう。

大切なのは、

何%を株式にするのが正解かではなく、自分が何のためにそのリスクを取っているのか。

だと思います。

30%下がると知っていることと、30%下がること

投資信託を買うときには、リスクについて説明を受けます。

価格が変動すること。

元本割れの可能性があること。

株式市場が大きく下がれば、資産も大きく減る可能性があること。

「分かりました」

と答えることはできます。

でも、

リスクを知っていることと、リスクを経験したことは同じではありません。

500万円を投資して、30%下がる可能性があると聞く。

それと、実際に自分の500万円が350万円になる。

同じことを言っているようで、たぶん感じ方はかなり違います。

ニュースでは株価急落が報じられる。

テレビをつけても、スマートフォンを見ても、不安になる話が増える。

昨日より10万円減った。

また今日も減った。

「もっと下がるのではないか」

「今のうちに売った方がいいのではないか」

そんなことを毎日考えるようになるかもしれません。

もちろん、65歳から投資を始めてはいけないという話ではありません。

年齢に関係なく、投資を始めることはできます。

ただ、これまで経験したことのない値動きを、自分がどう感じるのか。

それは、実際に自分のお金が動いてみないと分からない部分もあります。

老後の時間まで、相場に預けなくていい

私は、老後に十分なお金を持っている人が、投資をすることに反対ではありません。

投資が好きなら、続ければいい。

80歳までに1億円を作ることが目標なら、それに挑戦する老後だって面白いでしょう。

毎日マーケットを見ることが楽しい人もいます。

それも、その人の人生です。

一方で、投資を始めたことで、

朝起きるたびに株価を見る。

下がると不安になる。

ニュースを追い続ける。

夫婦で、

「また下がったね」

と話す。

そんな毎日になるのなら、私は少し考えてしまいます。

その投資によって得ようとしていたものは、何だったのでしょう。

お金を増やすために始めた投資が、いつの間にか毎日の心配事になっている。

特に増やしたい理由もなかったのだとしたら、少しもったいない気がします。

老後には、相場以外にも使いたい時間がたくさんあるはずです。

必要のなかった不安まで、自分の人生に持ち込まなくてもいい。

私はそう思います。

買った理由がなくなっているなら

では、投資を始めたあとに大きく値下がりしてしまったらどうするか。

ここでも、「下がったから売る」「買値に戻るまで待つ」と値段だけで考えない方がいいと思います。

商品そのものに大きな問題がなく、当面使う予定のないお金で、自分がその商品を持っている理由も変わっていない。

それなら、値下がりしたという理由だけで慌てて結論を出す必要はないでしょう。

一方で、よく分からないまま買っていた。

手数料も高かった。

自分の目的にも合っていなかった。

そして今あらためて考えても、その商品を持ち続ける理由が見つからない。

それなら、

「買値に戻るまで」という理由だけで持ち続けなくてもいい。

高い勉強代だったと思って、一度整理する選択もあります。

大切なのは、過去にいくらで買ったかではなく、

今、その投資を持っている理由があるか。

だと思います。

そのリスクは、自分で選んだものですか?

私は、自分と違う投資をしている人を説得したいとは思いません。

株式をたくさん持ちたい人は持てばいい。

現金をたくさん持っていたい人は、それでもいい。

投資をしないという選択もある。

人によって、目的も性格も人生も違うからです。

だから、このブログでも「これが正しい資産配分です」と決めるつもりはありません。

ただ、ときどき確認してみる価値のある問いはあると思っています。

そのリスクは、あなた自身が選んだものですか?

誰かに勧められたから。

みんながやっているから。

預金ではもったいないと言われたから。

そうではなく、

何のために投資するのか。

どれくらい減る可能性があるのか。

それでも自分は続けられるのか。

そこまで考えたうえで、

「私はこれをやってみたい」

と思うのなら、それでいい。

決めるのは、自分です。

だから、もしこれまで投資に興味のなかった親が、ある日突然、

「投資信託を買ったんだ」

と言ったら。

私はたぶん、難しいことを聞く前にこう言います。

「どうしたの、急に?」

そこから話を始めると思います。

このテーマを、もう少し考える

自分に必要なリスクから、資産配分を考える
「50代になったら、『何を買うか』より先に考えたいこと」

感情が動く前に、自分のルールを決めておく
「投資では、自分を信用しすぎない方がいい」

怖いと感じるなら、その感情も無視しなくていい
「一括投資が怖いなら、ゆっくり投資してもいい」

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