NISAを始めると、少し不思議な感覚になることがあります。
最初は月3万円だった積立を5万円にする。余裕が出てきたら10万円にする。ボーナスが入ったら、成長投資枠でも買ってみる。
そうやって投資額が増えていくと、今度は「まだ使っていない枠」が気になり始めます。
NISAの非課税保有限度額は1800万円です。
年間では最大360万円まで投資できるので、制度上は最短5年で1800万円の枠を使うことができます。
すると、
「できるだけ早く埋めた方が得なのではないか」
と思う人もいるでしょう。
理屈は分かります。
長期投資をするのであれば、早く投資した方が長く運用できます。
でも私は、NISAを最短で埋めることを、それほど目標にしなくてもいいと思っています。
NISAの枠は、人生のノルマではないからです。
すでに十分、投資できているかもしれない
たとえば45歳で金融資産が2000万円あり、毎年200万円を投資している人がいるとします。
もう少し外食を減らす。
旅行を一回減らす。
趣味に使うお金を少し抑える。
そうすれば、年間250万円を投資できるかもしれません。
でも、私はたぶんこう言います。
「もう年間200万円も投資しているんだから、十分じゃない?」
もちろん、将来必要になるお金や家計の状況によって話は変わります。
まだ十分な資産形成ができていない人もいるでしょう。
反対に、今は資産形成を優先したいと考えて、意識的に支出を抑えている人もいると思います。
それも一つの選択です。
ただ、
「NISAの枠が余っているから」
という理由だけで、今の生活からさらにお金を削る必要はないと思います。
5年で埋めなくてもいい
NISAの1800万円という枠は、最短5年で使うことができます。
でも、8年かけてもいい。
10年かけてもいい。
途中で積立額を減らす年があってもいいでしょう。
子どもの教育にお金がかかる年もあります。
家族で旅行に行きたい年もあります。
新しいことを始めたくなるかもしれません。
そういうときまで、
「今年はNISAにいくら入れられなかった」
と考えなくてもいい。
制度を最大限使うことと、自分の人生を最大限生きることは、同じではありません。
お金には、もう一つの複利がある
投資では、早くお金を入れることに意味があります。
運用する時間が長くなるからです。
これは大切なことです。
でも私は、人生にも似たようなことがあると思っています。
若いうちに旅行をして、知らない場所を見る。
興味を持ったことを勉強する。
子どもが何かに夢中になっているとき、その経験にお金を使う。
趣味を始める。
そこで得た経験や知識、人とのつながりは、その一回で終わらないことがあります。
その後の人生に影響したり、何年も思い出したり、別の興味につながったりする。
だから、
金融資産だけが、複利で育つわけではない。
そんなふうに考えてもいいのではないでしょうか。
投資に回した50万円は、将来もっと大きなお金になるかもしれません。
でも、今使った50万円が、その後の人生に長く残ることだってあります。
どちらが得かを、きれいに計算することはできません。
だからこそ、自分で配分すればいいのだと思います。
資産が育ってくれば、自分だけで頑張らなくてもいい
資産形成を始めたばかりの頃は、自分が入金するお金の影響がとても大きいものです。
100万円の資産に50万円を追加すれば、資産額は大きく変わります。
でも、資産が1000万円、2000万円と育ってくれば、少しずつ運用している資産そのものも働くようになります。
もちろん、相場が下がれば資産が減ることもありますし、追加投資を続ける意味がなくなるわけではありません。
それでも、資産形成の最初から最後まで、ずっと自分の入金力だけを最大化し続ける必要はないと思います。
ある程度まで育ってきたら、
自分が頑張る量を、少し減らしてもいい。
投資する金額を50万円増やすことより、その50万円で今しかできないことをする。
そんな選択があってもいいと思います。
今の自分にも、お金を配分する
投資をしていると、お金を使うことに罪悪感を持つことがあります。
この10万円を使わずに投資すれば。
この30万円をNISAに入れれば。
この50万円を20年間運用すれば。
そう考えれば、ほとんどの支出は「将来のお金を減らす行為」に見えてしまいます。
でも、それでは少し苦しい。
ちゃんと将来のために投資を続けているのであれば、残ったお金まで全部未来へ送らなくてもいい。
未来の自分には、もうお金を送っている。
だったら、今の自分にも少しくらい配分していいのだと思います。
旅行でもいい。
趣味でもいい。
勉強でもいい。
家族との時間でもいい。
そして、必ずしも何かの役に立つ必要すらないのかもしれません。
無駄なことこそ、ロマンですからね
投資の世界では、効率を考えることが大切です。
コストを下げる。
税金を抑える。
分散する。
余計な売買をしない。
使える制度は上手に使う。
私も、そういうことは大切だと思っています。
でも、投資で身につけた効率性を、そのまま人生全体に持ち込まなくてもいい。
旅行の費用対効果。
趣味の費用対効果。
外食の費用対効果。
休日の費用対効果。
そんなことまで考え始めたら、人生はずいぶん窮屈になってしまいます。
投資は効率的でいい。
その分、投資以外のところでは、少しくらい効率を忘れてもいいのではないでしょうか。
役に立たないことをしてもいい。
遠回りしてもいい。
後から考えたら、無駄だったと思うことがあってもいい。
ちゃんと投資を続けているのなら、お金を使うたびに罪悪感を持たなくてもいい。
NISAを5年で埋めてもいいし、8年でも、10年でもいい。
大切なのは、非課税枠を誰より早く埋めることではありません。
将来の自分にも、今の自分にも、ちゃんとお金を配分すること。
そして、ときには何の役にも立たないことに使ってみる。
無駄なことこそ、ロマンですからね。
このテーマを、もう少し考える
貯めるだけでなく、使うことにも目を向けてみる
→「5000万円貯めたあなたへ。そろそろ『使うこと』を考えてもいい」
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→「お金を使っても、減らないものがある」
お金が増えるほど、人生の選択肢も増えていく
→「仕事を『くだらない理由』で選べる自由」
