一括投資が怖いなら、ゆっくり投資してもいい

一括投資が怖いなら、ゆっくり投資してもいい

退職金や相続などで、まとまったお金が手元に入ることがあります。

たとえば1000万円。

生活費や近いうちに使う予定のお金は別に確保していて、この1000万円は10年以上使う予定がない。

いずれ株式などで運用しようと思っている。

こんなとき、よく出てくるのが、

「一括で投資するか、何回かに分けて投資するか」

という問題です。

過去のデータを使って比較すると、一括投資の方が有利だったケースは多くあります。

長期的に成長していく市場へ投資するのであれば、早く投資した方が、お金が市場で働く時間が長くなる。

理屈はよく分かります。

それでも、

「1000万円を今日全部投資するのは、ちょっと怖い」

と思う人もいるでしょう。

私は、その感覚を無理に消さなくてもいいと思っています。

期待値なら、一括投資

まとまった長期資金がすでに手元にあり、最終的にすべて投資することが決まっている。

この前提なら、投資する時期を遅らせるほど、その間のお金は市場に参加できません。

Vanguardが世界株の過去データを使って行った比較では、一括投資は3か月に分けて投資する方法を、1年後の資産額で68%のケースで上回りました。

もちろん、これからも68%になるという意味ではありません。

ただ、

長期で投資するお金なら、早く市場に置いた方が期待リターンは高くなりやすい。

これは知っておいていいと思います。

では、一括投資が唯一の正解なのでしょうか。

私は、そうは思いません。

人間は、期待値だけで投資しているわけではない

1000万円を一括で投資する。

その1か月後に株価が30%下がった。

1000万円が700万円になった。

頭では、

「長期投資なんだから気にしなくていい」

と分かっていたとしても、

「どうして一度に全部入れてしまったんだろう」

と思う人はいるでしょう。

人間は、利益を得た喜びよりも、損失を強く意識しやすいと言われています。

だったら、

「一括投資の方が合理的なんだから、怖くても我慢して全部投資しなさい」

とまで言う必要があるのでしょうか。

私はそうは思いません。

一括投資が怖いという感覚があるのなら、その感覚も大事にしたらいい。

投資するのは、理論ではなく人間だからです。

3年かけたっていい

たとえば1000万円を、3年かけて36回に分けて投資する。

単純に均等なら、毎月約28万円です。

1年間で投資してもいいし、2年間でもいい。

私は3年でも、それほどおかしいとは思いません。

3年あれば、その間に上昇する時期も、下落する時期もあるかもしれない。

もちろん、その3年間ずっと株価が上がり続ければ、一括投資した方がよかったという結果になります。

それは仕方ありません。

多少、投資のスピードが落ちたっていいじゃないですか。

プロの機関投資家が利用するプライベートエクイティなどのファンドでも、10年前後のファンド期間に対して、数年間の投資期間を設定する仕組みは珍しくありません。

もちろん、これは個人の株式投資とは事情が違います。

非上場企業への投資では、投資案件を探したり、資金を順次拠出したりする必要があるためです。

ですから、「プロも時間分散しているから個人も3年に分けるべきだ」という話ではありません。

ただ、まとまったお金があるからといって、今日一日ですべて投資しなければならないわけでもありません。

自分が納得できる速度で市場へ入っていけばいいと思います。

どちらの後悔なら、引き受けられるか

一括投資にも、分割投資にも後悔する可能性があります。

一括投資した直後に暴落すれば、

「分けて投資すればよかった」

と思う。

反対に、分割している3年間ずっと相場が上がれば、

「最初に全部投資しておけばよかった」

と思う。

未来が分からない以上、両方の後悔を消すことはできません。

だったら、

自分は、どちらの後悔なら引き受けられるか。

そう考えてみてもいいと思います。

1000万円を一括投資した直後に300万円減ることの方がつらいのか。

分割投資している間に相場が上がり、一括投資より200万円少ない結果になる方がつらいのか。

同じ人でも、感じ方は違います。

取り逃した200万円は、損失ではない

仮に3年間かけて投資した結果、一括投資した人より資産が200万円少なかったとします。

友人から、

「ほら。一括で投資しておけば、あと200万円あったのに」

と言われるかもしれません。

でも、200万円を失ったわけではありません。

結果として、一括投資した場合に得られたはずのリターンを取り逃した。

これは機会費用です。

そして、その機会費用と引き換えに何を得たのかというと、

1000万円を一度に投資しなくてもいいという安心

だったとも考えられます。

だったら、

「そうだね。まあ、一括投資はちょっと怖かったからね」

と笑えばいいのではないでしょうか。

それくらいでいいと思います。

違うリスクを取った人と、リターンだけ比べない

投資をしていると、他人の成績が目に入ります。

一括投資した人。

個別株に集中した人。

株式100%で運用した人。

自分より大きなリスクを取った人が、それに見合う大きなリターンを得ることもあります。

でも、その結果だけを見て、

「自分も同じようにしておけばよかった」

と後悔する必要はありません。

その人と自分では、取ったリスクが違うからです。

個別株に集中するリスクを取りたくなかった人が、あとから10倍になった銘柄を見て落ち込む必要はない。

1000万円を一括で投資するリスクを取りたくなかった人が、一括投資した人のリターンを見て落ち込む必要もない。

自分と違うリスクを取った人のリターンだけを、自分のものさしにしない。

リスク許容度は、人それぞれです。

自分が納得できる入り方でいい

投資の世界では、ときどき「最も合理的な方法」を一つに決めたくなります。

一括か、分割か。

賃貸か、持ち家か。

株式100%か、分散するか。

もちろん、数字で比較できることはあります。

一括投資の方が期待リターンは高くなりやすい。

その事実は知っておけばいい。

でも、その事実を知ったうえで、

「それでも私は、ゆっくり投資したい」

と思うなら、それも一つの選択です。

投資は長く続きます。

多少ゆっくりでも、自分が納得できる入り方を選べばいい。

その間に相場が上がってしまったら、

「まあ、一括投資はちょっと怖かったからね」

と笑えばいい。

私は、それくらいでいいと思っています。

このテーマを、もう少し考える

そもそも、自分はなぜそのリスクを取るのか
「その投資、どうして始めたんですか?」

感情に任せず、あらかじめルールを決めておく
「投資では、自分を信用しすぎない方がいい」

相場が荒れたときにも、決めた方法を変えないために
「暴落した日に、投資のルールを決めない」

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